米国リポート (1999年6月)

● 医療制度(1)

ロスアンゼルスのカウンティー雇用の医師が労働組合を結成

米国では医師が労働組合を作る動きが広がっているが、 ロスアンゼルスのカウンティー(注1)病院雇用の医師も最近労働組合を結成した。 結成の理由は報酬(ベースアップ)問題ではない。 患者の診断に於いては、政治家やHMO(注2)に干渉されず、医師が判断及び決定する権利を有する、という医師としての当然の立場を護ることを目的とする。

全米内科医及び歯科医労働組合のエグゼクティブ・ディレクターのグレイ・ロビンソン氏は次の様に語っている:

"現在大きな変化が起ころうとしている。 現行システムに於いて医師は本来の権利を奪われてしまっているからだ"

今回組合を結成した医師は、ロスアンゼルス・カウンティー病院に雇用され、低所得者や低額の医療保険の契約患者の治療にあたっている。 医師達は低所得者やHIV感染患者に対する治療の改善を強く主張している。

"労働組合の結成によって、このような患者に最高の治療を提供することを推進するのである"とロスアンゼルス・カウンティー医師労働組合長のロバート・ワインマン医師は語っている。

しかし、HMOや他の医療プラン関係者は、"医者は治療における診断権利を有しており、労働組合を結成せずとも既に有利な立場にある。 HMOにおいては、患者の病状を最も正しく把握する資格は医師にある"とAAHP(注3)スポークスマン、ドナルド・ホワイト氏は反論する。

ロスアンゼルス・カウンティー医師の労働組合結成は、HMO雇用の医師や個人経営の医師にも大きな影響を与え、医療費の上昇を引き起こすことになるかも知れない、と全米内科医及び歯科医労働組合ディレクターのロビンソン氏は指摘している。 又、組合結成については、カウンティー病院雇用の医師の方が、HMO雇用の医師よりも有利な立場にいることは確かである。 しかし、HMO雇用の医師や他の医師が労働組合を結成することが非常に難しいというわけではない、と氏は語る。

"我々が注意していることは、独禁法違反である。 医師が団体を形成し、医療費をコントロールし、決定することは違法である"とAAHPのスポークスマン、ホワイト氏は語っている。

更に、HMOの全国団体として、AAHPはHMO運営に関する十分な情報公開を行なっていると語り、現行システムの正当性を主張している:

"最終的な勝者は患者であることを我々は信じている。 患者は最低の費用で、最高の治療を受けている"と。

しかし、現在の医療制度に反対意見を唱える医師の数は明らかに増大している。

"現行システムに反旗を翻す医師は今後益々増えるだろう。 山火事のように全米に急速に広がるだろう。 現行システムは真に患者の為に機能しているとはいえない。 政治家は問題に対し耳を貸そうとはしないし、 保険会社は利益だけしか考えていない"と医師の一人、ルイス・シンプソン氏はインタビューに答えている。


(注1)     カウンティー=アメリカの殆どの州の地方行政の単位。 カウンティーの権限は州によって異なるが、一般に市町村と比べると州の出先的色彩が強い
(注2)    HMO;Health Maintenance Organization(医療管理団体)= 保険会社及び医療サービス提供者(医者)としての両方の機能を有する団体。 加入者は毎月又は四半期毎に一定額の保険料を特定のHMOに支払うことによって、当HMOと協定している医者グループの治療を受けることができる。 HMOは予防治療を促進し、従来からの医療制度における医療費の上昇に歯止めをかけることを期待して作られた
(注3)    AAHP; American Association of Health Plan(アメリカ医療プラン協会)= HMOsの全米団体


参考資料: IBA West『Life & Health Report』1999年6月4日号

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