米国リポート (1999年2月)

● 米国の生保エージェント@

生命保険会社が始めてエージェントを採用したのは今を去る1830年である。 以来、生命保険業界では主に専属エージェンシーシステム(agency-building system又は、career agency system)が採用されてきた。 このシステムの下では、採用された個人はトレーニングをうけ、特定の保険会社の地区支店に机を置き、支店長或いは総代理人の監督の下で専属エージェントとして販売に携わってきた。

保険会社は常にコスト効果の高い流通方法を模索しているが、その必要性は専属エージェンシーシステムによる販売業績の低下と他流通システムとの競争激化によって益々高まりつつある。 同システムによる生産性が減少していることから、保険会社は専属エージェントの維持費用を削減すべく独立エージェントやその他の媒体を通じての販売に切り替え始めた。 1983年には24万4千人であった専属エージェント数は10年後の1993年には21万9千人に減少した。 現在、個人の生命保険販売に占める専属エージェントの割合は55%、残り45%の内、43%は独立エージェントで、2%はその他の媒体を通じて販売されている。

生命保険商品は今後、どのような流通方法を通じて販売されるのだろうか? 専属エージェンシーシステムは消滅してしまうのであろうか? 他業界からの保険参入はエージェントにどのような影響を与えるのであろうか? テクノロジーの開発はエージェントの仕事を変えようとしているのか? 21世紀に生き延びる生保エージェントとは?


従来から採用されているの専属エージェンシーシステムとその経営効率

ニューヨーク・ライフ保険会社は今日も専属エージェンシーシステムを積極的に支持している保険会社の一つである。

専属エージェントのトレーニングは全米の148の地区支店で行なわれる。 各支店には1人から3人のインストラクターがいる。 エージェントはライセンス取得のための勉強(4週間から6週間; カリフォルニア州の場合は52時間)に加え、これらのインストラクターから60時間から100時間のトレーニングを受ける。

これを修了したエージェントは会社と契約を交わす。 そして、'ファンダメンタル・キャリア・スクール'に入る。 8時から5時まで6日間行なわれる。 これは顧客とのインタビューやミーティング方法と引受を習う実践授業である。 次に'ベイシック・キャリア・スクール'。 これは一週間に2回、3ヶ月間行われ、 ユニバーサル生命と確定年金を習う。 次に3ヶ月間の'インターメディエート・キャリア・スクール' でファンディング、特約、その他の専門知識を習う。 一週間に一回行なわれる。 ここまで終えると6ヶ月間である。 この後、ダラスで行なわれる5日間の集中講座「キャリア開発会議」を受けることができる。 ここでは顧客との関係作りを学ぶ。 最後の'アソシエート・プログラム'ではこれまで習ったことを小規模ビジネス・オーナーに適用させることを学ぶ。

同社のトレーニング・プログラムでは、仮契約から最初の一年間でエージェント一人につき2万ドル、 最初の3年間で4万ドルを費やす。 会社の負担金額は個々のエージェントの獲得契約数(エージェントの受け取る手数料額)を基に算出される。

同社のエージェンシー管理部の上席副社長、ヒルデブランド氏は、エージェントのリクルート、トレーニング、そして5年間の維持費用をもってしても長期的にはこの流通方法がベストであると語る。


エージェントを育て、4年間維持するのにかかる妥当なコストとは?

経営者側として投資した金額に見合うリターンを得るには、一体エージェントにどの程度の業績を要求すべきであろうか? この質問は専属エージェンシー・システムの下でのエージェントに関する質問提起であるが、他のシステムにも適用され得る。

1997年、ティリング・ハースト・タワーズ・ぺリン社は、専属エージェンシー・システムを採用している主要保険会社を対象に、生命保険セールスの有効性調査を行なった。 その結果、保険会社が専属エージェントに要求する初年度の年間最低業績額として 9千ドルから4万2千ドル(エージェントの受取る手数料額で)という数字が挙げらた。 平均2万ドルである。

AMベスト9月号の「販売についての洞察」のなかで、 ベスト・レビューのコラムニストでありティリング・ハースト・タワーズ・ぺリン・ニューヨーク社代表のリチャード・ベリー氏は、保険会社が専属エージェントに要求すべき年間最低業績額として2万2千ドル(エージェントの受け取る手数料額)を挙げている。

2万2千ドルの内訳は、 1万6千ドルの直接コスト(福利厚生給付、ライセンス、トレーニング、事務所賃貸費のシェア、事務的サポート、マネジャーサポート、その他の運営コスト)と、6千ドル(会社がそのエージェントの開発の為に過去に費やした投資の償却金額)である。

最低業績額とは、それぞれのエージェントの本人のみの直接固定費と会社の投資額をカバーするための金額である。 他の新規エージェントのリクルート費用、トレーニング費用、間接経費、又は、システムへの投資リターンを負担するわけではない。

更に、間接経費全額と投資へのリターンをカバーするには足りないが、直接経費と辞めていった他のエージェントの開発費用までをカバーする為には各エージェントの初年度業績金額として4万ドルが望ましい、と述べている。

最低業績金額は個々の保険会社の許容能力によって異なる。 それぞれ保険会社は、このような数字を算出することによって"エージェンシー・システムの経済"を理解し、最も生産的な流通方法を選択しなければならないのである。


銀行の保険参入が生保エージェントに与える影響とは?

流通システムの複合化/多様化が起っていることは言うまでもない。 流通システムの多様化とは通常の保険エージェントとは異なるチャネルを通じての保険販売である。 例えば、ダイレクト・レスポンス・システム、銀行、株式ブローカー、フィナンシャル・プランナー、インターネット、電子キオスク(会話式ビデオを備えた自動販売機)、他保険会社との提携によるマーケティング(InterCompany Marketing Group)を挙げることができる。 この10年から15年間、流通コストの削減を求める保険会社にとってこのような様々な流通方法の需要は益々増加している。

1980年、銀行は個人預金の23%を保有していたが、現在その割合は13%に減少した。 消費者が預金を他の投資に移したからである。 今や、銀行は保険流通に新しい収益を求め、保険販売に積極的に進出しようとしている。 大規模銀行は保険会社や大規模ブローカーとの提携、小規模銀行はエージェンシーを買収、或いはエージェンシーとの提携によって保険業界に入り込もうとしている。

銀行が触手を伸ばしている保険商品として年金が挙げられる。 現在銀行は信用生命保険(Credit Life Insurance)市場のシェア47%、年金市場シェア16%を握っている。 2001年にはこの割合はそれぞれ50%、32%になると予測されている。 米国主要銀行50社の統計調査によると、年金の売上げの伸び率が信用生命保険のそれを大きく上回っているという。 年金市場全体の売上げは現在伸び悩んでいるが、今後銀行の積極的な参入によりこれまでアクセスできなかった顧客への販売が可能となるかも知れない。

生命保険について言えば、保険会社の多くが所得者層で言えば高所得者、即ち、上位10%から15%をターゲットにしている。 中所得者層への販売はコスト比率が高いからである。 このような中所得者層の顧客データを所有している銀行は彼等に低コストでアクセスすることに成功するのではないかと見られている。

一方、保険会社は銀行業務の認可を得ることによってこれに対抗しようとしている。 全米主要保険会社、例えば、ステートファームやファーマーズは、自動車、住宅、生命保険の顧客にオートローン、住宅ローン、教育ローンを提供することによりOne-Stop Shopを実行しようとしている。 更に、地方の小規模銀行との提携を目指しているエージェンシーも多く現れている。 エージェント協会はこのようなエージェンシーに対し、"銀行との提携方法の手引き"を用意し、講習を行なっている。

結局、銀行の保険参入は保険市場全体の拡大を大いに助けることになるかも知れない。

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