過去の記事より (1998年7月)

● クロスセリング - そのB

損保エージェントが生保分野で活躍

損害保険料の低下、厳しい競争、 洗練された、多くを要求する顧客に悩まされているエージェンシーにとって、 二つ以上の帽子を被ることで決定的な違いを生み出すことができる。 このようなエージェンシーは顧客に損害保険だけを提供するのではない; 彼等は提供する商品及びサービスとして、 生命保険、団体医療保険、 就労不能保険にまで拡大していく。

今回は、 顧客にフルサービスを提供しているエージェンシー、2社を紹介する。 両会社とも収益が高く、顧客企業は彼らのサービスに十分満足しており、同社のプロデューサー(新規顧客開拓担当者)も幸せのようである。 これらエージェンシーは、損保商品を主に取扱っているが、生命保険、団体医療保険、就労不能保険商品を取扱うことは、 収益増の観点からみても当然のことながら、 マーケティング戦略 - 特にクロスセリング- において大いに重要な意味を持つ。

(1)相互訓練アプローチが奏功: LMC社

過去5年間"アイオワで最も優れたゴルファー"に選ばれているマイク・マッコイ氏は、クラブで皆の賞賛を受けずにゴルフ場を後にすることはない。 デモイン市のラ・メール・マロック・コンドン社(LMC)の代表である、マッコイ氏は同様の法則が独立エージェンシーにも適用される、と言う。 "今日では、 エージェントは顧客に対しフルセットのサービスを提供できなければならない。 一般的な企業パッケージ保険から、団体所得補償保険、そして401Kプランにいたるまでのすべてを"と断言する。

"顧客にとって損害保険と医療保険にはなんら違いはない。 どちらも顧客にとっては保険だ。 あなたは保険エージェントであり、 顧客はあなたが全ての保険を提供することを期待している。 当然のことでしょう"

LMC社はアイオワ州で最も歴史の古いエージェンシーである。 1865年に設立された。 LMC社の前身であるホーキー保険社はある保険会社の総代理店として設立され、後に他エージェンシーを買収しながら独立エージェンシーとして拡大していった。 "オーナーは常に代わりながら受け継がれてきた"と代表者として今年11年目のマッコイ氏は語る。

LMC社は1968年に始めて生保分野に乗り出した。 "他エージェンシーから一連のビジネスを買収した。 その際CPCUでありCLUであるジム・ノリスというプロデューサーも一緒に移ってきた。 ジムは、 損害保険、生命保険、医療保険何でもできる。 それで会社としては彼に生保分野での拡大を担当させた。"

ノリス氏は、 企業/団体の従業員福利厚生給付プログラムの担当として、 コネティカットミューチュアル生命保険会社から生命/医療保険のプロデューサーをリクルートした。 時を置かずして更に二人の生保プロデューサーを採用し、生保取扱の為に支店も設立した。 "支店に対し、最初は資金面で援助し、投資もした"とマッコイ氏は思い起こす。 "損保とは別のコンピュータシステムを買い、プロデューサーを増やし、別のマーケティングプログラムを開発した。 黒字にするまでには数年かかった。 しかし、私たちは生保分野で成功することに実に力を入れた。 そして、 数年後、 投資しただけの見返りを得るまでになった"と彼は語る。

何故、LMC社は主要ではないビジネスに関わり続けることが可能であったのか?

それは顧客が要求したからに過ぎない。 "損保分野の顧客企業が、 生保分野を含めた全ての保険を扱って欲しいと依頼してきたからだ。 従って、 ある意味では既存の顧客に対するサービスの延長に過ぎない、とも言える"とマッコイ氏は言う。

しかし、 それは1990年代に変わっていく。 LMC社にとって生保商品は既存の損保商品の顧客への"追加"サービスであったのだが、 より重要な、必須の取扱商品となってくるようになった。 生保部門の収益は、 LMCにとっては比較的小部分を占めるでしかなかった - 1990年では会社全体の収益の15%が生保部門からの収益であった - 今年、生保分野からの収益は全体の3分の1までに伸びた。

"片隅でほんの少し小売をする、なんていうのは、当社の方針には合わない。 私たちの仕事は顧客の保険の問題に解決を与えること、それのみ。 そこで当社は相互訓練アプローチをとった。 即ち数人のプロデューサーが一人の顧客の為にチームワークを組んでサービスにあたるというものだ。 その時、チームの全て、 個々のプロデューサーの役割が重要であった"とマッコイ氏は言う。

顧客とのコンサルテーション・ミーティングに於いては、 顧客の種々の保険の全担当者が出席する; 全担当者とは、 損保サービス担当者、団体医療保険サービス担当者、リスクマネジメント専門家、ロスコントロール専門家、安全管理担当者、 日々の顧客サービス担当者を含む。 "そしてチーム全員が集まり、 顧客の為にブレインストーミングを行なう"とマッコイ氏は言う。

クロスセリングチームのプロデューサーは、個々の成績によって報酬を受け取る。 "当社では獲得契約にかかったプロデューサーの時間と労力に対する報酬金額計算方法を開発した。 契約の獲得に関わった全てのスタッフが報酬を受ける。 完全なシステムとは言わない。 しかし、いつでもそのシステムを改善しようと努力している"とマッコイ氏は語る。

生保分野に対するLMC社の努力は報われた。 損保分野の顧客企業2,300社の内、 今や、1,100社が生保商品の顧客でもある。 "既存の損保顧客に、 商品/サービスを追加することによって顧客には当社がより重要な存在となるだけでなく、 当社にとっても収益源の分散という点で有利である"とマッコイ氏は語る。 "当社は極めて健康な生保マーケットの受益者であるようだ。 損害保険分野で利益を挙げることが難しい時期に、団体医療保険では保険料のアップが続いている"

生保分野を拡大するためにLMC社はこの2月に、デモイン市でも大規模の年金/投資会社であるJ.L.セドラセック社を買収した。 セドラック社の3億ドルの資産と、2千5百万ドルの保険料及び預金がLMC社の管理下となった。 LMC社/セドラック社の保険料合計は1億ドルに上りスタッフ数は75名となった。 "生保分野で行なっていた事が、拡大に繋がった"とマッコイ氏は語る。

"今や、 年金プラン管理担当者二人をスタッフに加えるまでになった。 更に、数人の投資アドバイザーが顧客の資産配分についてアドバイスを与えることもできる"

"これまではLMC社にとって生保分野は既存の顧客への追加商品サービスであった。 しかし、今はその生保分野で大きな成功を収めた。 以前は損保分野の顧客が生保分野の見込客であったが、 今や、生保分野の既存客に損保商品の販売攻勢をかけるまでになった"

新規契約の開拓に関わるとゴルフの時間がなくなる。 "顧客と時たまプレイすることはあるが、以前程はできなくなった"とマッコイ氏は言う。 ハンディ無しのゴルファーは顧客に勝たせることがあるのだろうか? "いえ、計画して勝たせるということはないね"とマッコイ氏は結んだ。


米国の生保エージェント

生命保険会社が始めてエージェントを採用したのは1830年である。 以来、生命保険業界では主に専属エージェンシーシステム(agency-building system又は、career agency system)が採用されてきた。 このシステムの下では、採用された個人はトレーニングをうけ、特定の保険会社の地区支店に机を置き、支店長或いは総代理人の監督の下で専属エージェントとして販売に携わってきた。

保険会社は常にコスト効果の高い流通方法を模索しているが、その必要性は専属エージェンシーシステムによる販売業績の低下と他流通システムとの競争激化によって益々高まりつつある。 同システムによる生産性が減少していることから、保険会社は専属エージェントの維持費用を削減すべく独立エージェントやその他の媒体を通じての販売に切り替え始めた。 1983年には24万4千人であった専属エージェント数は10年後の1993年には21万9千人に減少した。 現在、個人の生命保険販売に占める専属エージェントの割合は55%、残り45%の内、43%は独立エージェントで、2%はその他の媒体を通じて販売されている。

生命保険商品は今後、どのような流通方法を通じて販売されるのだろうか? 専属エージェンシーシステムは消滅してしまうのであろうか? 他業界からの保険参入はエージェントにどのような影響を与えるのであろうか? テクノロジーの開発はエージェントの仕事を変えようとしているのか? 21世紀に生き延びる生保エージェントとは?

従来から採用されているの専属エージェンシーシステムとその経営効率

ニューヨーク・ライフ保険会社は今日も専属エージェンシーシステムを積極的に支持している保険会社の一つである。

専属エージェントのトレーニングは全米の148の地区支店で行なわれる。 各支店には1人から3人のインストラクターがいる。 エージェントはライセンス取得のための勉強(4週間から6週間; カリフォルニア州の場合は52時間)に加え、これらのインストラクターから60時間から100時間のトレーニングを受ける。

これを修了したエージェントは会社と契約を交わす。 そして、'ファンダメンタル・キャリア・スクール'に入る。 8時から5時まで6日間行なわれる。 これは顧客とのインタビューやミーティング方法と引受を習う実践授業である。 次に'ベイシック・キャリア・スクール'。 これは一週間に2回、3ヶ月間行われ、 ユニバーサル生命と確定年金を習う。 次に3ヶ月間の'インターメディエート・キャリア・スクール' でファンディング、特約、その他の専門知識を習う。 一週間に一回行なわれる。 ここまで終えると6ヶ月間である。 この後、ダラスで行なわれる5日間の集中講座「キャリア開発会議」を受けることができる。 ここでは顧客との関係作りを学ぶ。 最後の'アソシエート・プログラム'ではこれまで習ったことを小規模ビジネス・オーナーに適用させることを学ぶ。

同社のトレーニング・プログラムでは、仮契約から最初の一年間でエージェント一人につき2万ドル、 最初の3年間で4万ドルを費やす。 会社の負担金額は個々のエージェントの獲得契約数(エージェントの受け取る手数料額)を基に算出される。

同社のエージェンシー管理部の上席副社長、ヒルデブランド氏は、エージェントのリクルート、トレーニング、そして5年間の維持費用をもってしても長期的にはこの流通方法がベストであると語る。


エージェントを育て、4年間維持するのにかかる妥当なコストとは?

経営者側として投資した金額に見合うリターンを得るには、一体エージェントにどの程度の業績を要求すべきであろうか? この質問は専属エージェンシー・システムの下でのエージェントに関する質問提起であるが、他のシステムにも適用され得る。

1997年、ティリング・ハースト・タワーズ・ぺリン社は、専属エージェンシー・システムを採用している主要保険会社を対象に、生命保険セールスの有効性調査を行なった。 その結果、保険会社が専属エージェントに要求する初年度の年間最低業績額として 9千ドルから4万2千ドル(エージェントの受取る手数料額で)という数字が挙げらた。 平均2万ドルである。

AMベスト9月号の「販売についての洞察」のなかで、 ベスト・レビューのコラムニストでありティリング・ハースト・タワーズ・ぺリン・ニューヨーク社代表のリチャード・ベリー氏は、保険会社が専属エージェントに要求すべき年間最低業績額として2万2千ドル(エージェントの受け取る手数料額)を挙げている。

2万2千ドルの内訳は、 1万6千ドルの直接コスト(福利厚生給付、ライセンス、トレーニング、事務所賃貸費のシェア、事務的サポート、マネジャーサポート、その他の運営コスト)と、6千ドル(会社がそのエージェントの開発の為に過去に費やした投資の償却金額)である。

最低業績額とは、それぞれのエージェントの本人のみの直接固定費と会社の投資額をカバーするための金額である。 他の新規エージェントのリクルート費用、トレーニング費用、間接経費、又は、システムへの投資リターンを負担するわけではない。

更に、間接経費全額と投資へのリターンをカバーするには足りないが、直接経費と辞めていった他のエージェントの開発費用までをカバーする為には各エージェントの初年度業績金額として4万ドルが望ましい、と述べている。

最低業績金額は個々の保険会社の許容能力によって異なる。 それぞれ保険会社は、このような数字を算出することによって"エージェンシー・システムの経済"を理解し、最も生産的な流通方法を選択しなければならないのである。

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