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2014年米国研修リポート
4月16日、7日間の米国研修が無事終了した。2001年以来今年は14回目であったが、最も充実
した研修であった。理由は、滞在期間を長くしたこと、訪問先エージェンシーを5社に増やしたこと、
訪問先に送った質問状に対し、出発前に回答があったので、当日はQ&Aに徹することができたこ
と、日曜日をはさんだのでそれぞれが余暇を楽しむことができたこと、などであろう。
4月9日にワシントンD.C.に到着、3日間をワシントンD.C.で、12日に西海岸に移動、4日間をサ
ンフランシスコで過ごした。ワシントンD.C.ではIIABA法制度大会に参加、日本からの参加者のた
めのセミナー受講、そしてエージェンシー2社を訪問した。西海岸では3社を訪問した。
ワシントンD.C.での訪問先はJ.W. マッカーティン社とUSI社、西海岸での訪問先はヘファーナン
保険ブローカー、モンテレー保険エージェンシー、そしてスツラトン・エージェンシー。これら5社
のエージェンシーは、規模や歴史や経営方針が大きく異なっている。
最初の訪問先はJ.W. マッカーティン社、従業員数14人、手数料収入2億5千万円($2,507,000)、
生産性1千780万円のベスト・プラクティス・エージェンシーである。1967年に現社長の父親によっ
て設立された家族経営の会社である。スタッフ全員が二重モニターで業務を行う。ペーパーレスで
ある。収入の65%は個人損害保険、35%は企業損害保険契約である。
午後の訪問先はUSI社。買収によって拡大した。米国に150拠点、スタッフ数4千人、年間収入は
$971,000,000(971億円)。この規模のエージェンシーの例に漏れず、顧客には本格的なリスク・
マネジメント・サービスを提供している。リスクの分析、査定、評価、解決法の提供に加え巨大災
害のモデリングや保有額の分析も行っている。1994年に設立され、買収によってこの規模になって
いるのだが、素晴らしい点は、特定業種に専門性と経験を有するエージェンシーを買収してきたこ
とである。従って、全ての拠点がそれぞれの専門分野−例えば、農業、建築、航空産業、通信、エ
ネルギー、公共工事、金融、製造、非営利団体、不動産業など−を扱っているということだ。
20年前から実施しているベスト・プラクティス調査で2013年度に始めて新しい調査項目が加わっ
た。それは「業種・顧客層・商品に特化しているか?」である。最小規模(手数料収入1億2千5百
万円以下)の場合、39.4%が「Yes」と、最大規模(手数料収入25億円以上)の場合、80.8%が
「Yes」と答えている。規模が大きいほど、専門性に特化している割合が高いのは当然である。規模
の大きいエージェンシーは専門家を雇用する余力があるからだ。
一方、西海岸での訪問先「モンテレー保険エージェンシー」は特化型ではなく、何でも屋である。
同社の歴史は古く、設立は1888年。営業範囲はオフィスから半径20 km 〜30 kmの個人及び企業顧
客である。スタッフ数は15人。実は、同社の元オーナーが、2008年に、自社を、サクラメント市の
ブローカー「J.O.ブロンソン社」に売却した。従って、現在、モンテレー保険はJ.O.ブロンソン社
の傘下に入っている。しかし、社名は変更していない。「モンテレー保険エージェンシー」という
社名で地域住民から親しまれているからだ。
ヘファーナン・グループは面白かった。1988年の設立以来、25年間に、実質成長(買収ではなく)
で現在の規模−従業員数420人、収入103億円($103,600,000.)−に拡大した。代表者のマイク・
ヘファーナン氏の「とにかく販売を推進しています」と言うのが潔い。この規模のエージェンシー
になると、「顧客のリスク査定を先ず行います。コンサルティング営業です。販売を前面に出しませ
ん」と言うのが普通である。しかし、ヘファーナン氏は「販売です」とはっきり。
最終日午後の訪問会社はシリコン・バレーに拠点を置くスツラトン・エージェンシーである。主
要顧客は、勿論、テクノロジー関連会社である。従業員数13人、手数料収入2億5千万円
($2,500,000.)だ。過去数年間、ベスト・プラクティス・エージェンシーに選ばれている。代表者
は42歳で、スタッフ全員が代表者より若い。新規採用については、テクノロジーに対する‘センス’を
問う。即ち、テクノロジーに慣れ親しんでいることが採用の要件となる。保険については採用後、
教育・トレーニングするとのこと。保険知識は教育によってなんとかなるが、テクノロジーの取扱
いは、教育によってなんとかなるものではない、ということであろう。わかります。
このスツラトン・エージェンシーとヘファーナンは再度訪問するつもりである。まだ、多くの聞
き足りない質問がありましたので。
今回のツアーが参加者に喜ばれた別の要因は、Q&A形式にしたことであろう。訪問先には2月半
ばに質問状を送付し、回答が3月終わりに届いた。おかげで参加者は訪問前に訪問先の基本情報(規
模、財務状況、戦略、方針など)を得ていたので、当日は経営者とのQ&Aに徹することができた。
成功した理由もう一つ。日曜日をはさんでいたので、各人が余暇を楽しむことができたことであ
ろう。ぺブル・ビーチでのゴルフ、ナパ・ワイナリーの訪問、ジャイアンツのベースボール・ゲーム
観戦など、充実した7日間でした。
来年もどうぞお楽しみに!
(インスウォッチ、2014年4月掲載)