● CSR（顧客サービス責任者）の仕事

顧客サービス責任者（CSR）の業務の効率化は新規開拓と同様に重要な課題である。CSRはプロデューサー（新規顧客開拓責任者）に付いて、見込み客への提案書の作成に始まり、申込書の記入、保険会社との交渉、見積の比較、保険証券のチェック、顧客対応、異動処理、そして継続処理に携わる。CSRの仕事が滞りなく行われ、間違いがなければ、顧客を失うことなく、また、一人当たり取扱高（手数料収入）が大きければ大きいほどコストを削減できる。

CSRの業務効率を改善するためにエージェンシーが実践しているのは次である：

 • 優れた環境と道具を用意する。
 • 仕事に権限を与える。そして、説明責任を持たせる。
 • 各人の業務を測定、監査する。
 • 業績アップに対しては報奨金を提供する。

環境と道具：　使いやすい棚や広い机、二重または三重モニターを提供する。CSRには営業担当者よりも広い机を提供すべきであろう。営業担当者は机に向かっているよりも、外で多くの見込み客と出会うのが本来の仕事である。CSRこそ大きな机が必要だ。ペーパーレスを実践できない限り、CSRには広い机を用意してあげてください。

業務の測定と監査：　エージェンシー管理システムによって、各CSRの電話の回数、見積請求件数、異動処理件数、保険付保証明書の発行数など、業務毎の統計を出すことがができるようになり、仕事の監査は容易になった。あるCSRは一日に平均25件の仕事を行っていることが明らかになった。一方、75件の仕事をこなしているCSRもいることが判る。仕事に追われている人と、そうではない人が社内にいるというのは、どこか問題があるはずである。原因を調べなければならないだろう。

測定には、エージェンシー経営コンサルタント会社が用意しているワークフロー手順表を利用するのも一つの方法である。それはCSRの仕事を細かく一単位に分解したものである。その利用方法は、まず、CSRが仕事をした度にリストに記しをつける；リストに記入する期間は最低一週間必要である。何故なら、終えるのに2，3日を要する仕事もあるからだ。コンサルタント会社は、四半期毎に3週間続けることを勧めている。そうすることによって、未処理の仕事や後回しにされる仕事の所在が明らかになる。勿論、仕事の件数だけに焦点をあてるべきではない。何故なら、CSR各人の仕事のペースが違うからである。猛烈な速さで仕事をこなしても不備があればエージェントE&O（エージェント専門家職業賠償責任）で訴訟を起こされる原因となる。一方、仕事が遅くても内容には間違いがないCSRもいるのだから。

CSRの仕事を測定し、調整する際に参考になるのが、ベスト・プラクティス調査統計である。自社と同規模で、好業績を挙げているエージェンシーのCSRの平均取扱契約数と規模、業務内容、報酬などを、自社のそれと比較することができる。自社のCSRの一人当たり取扱高が手数料収入にして20万ドル（2千万円）であり、ベスト・プラクティス・エージェンシーは、25万ドル（2千5百万円）から高いところでは35万ドル（3千5百万ドル）とあれば、自社CSRの仕事の手際を見直す必要があるのは明らかだ。

冒頭に述べたCSRの業務には含めなかったが、最近は、CSRにアカウント・ラウンディングをさせているエージェンシーが増えている。アカウントとは契約者、または契約者の保険証券ポートフォリオという意味で、ラウンディングとは、小さな雪の塊を転がしながら大きくすること（雪だるまを作る要領で）。即ち、既存顧客に別の保険を販売（クロスセリング）したり、既存の保険の限度額を引き上げ（アップセリング）たり、特約を追加（アップセリング）したりすることにより、顧客あたりの保険料、即ち、手数料を増やすことである。

　実際、ノースカロライナ州のソマーズ・パーデュー社の8名のCSRは、半年間に437件の保険を販売した。最初は、販売成績表を壁に掲示した時、CSRは嫌がったが、今や、皆、一番業績が高いのは誰かを知りたくて掲示を楽しみにしているとのこと。ベストプラクティス統計では、中小規模のエージェンシー（手数料収入が2億以下）のCSRは、業務時間の15％をアカウント・ラウンディングに費やしている。但し、向き、不向きがあり、販売は誰にでもできるわけではない。CSRの意向を尋ねることは必須であろう。

（インスウォッチ、2012年3月掲載）