● シリコン・バレーをターゲットに

シリコン・バレーを市場として高い生産性を上げているエージェンシーを紹介しよう：

一人当たり売上（手数料収入）は26万ドル（＝2千6百万円） ベスト・プラクティス・エージェンシーである。即ち、利益率、継続率、増収率、安定性も良好 テクノロジー活用に積極的。他社のためにソフトウェア開発までを行っている。 オーナーは40歳、共同経営者は34歳、その他のスタッフは全員40歳以下である。

シリコンバレーはカリフォルニア州北部、サンフランシスコの南に位置する。インテルやセミコンダクター等、多数の半導体メーカーが拠点を置いていたことから、半導体の原料である「シリコン」、そして、地形が渓谷（＝バレー）であることからシリコン・バレーと呼ばれるようになった。アップル、グーグル、フェイスブックもこの地域に本社を置く。

シリコン・バレーの中ほどに事務所を置くスツラトン・エージェンシーは、当然、テクノロジー関連会社を市場とする。同社の顧客は、最新テクノロジー会社、例えば、バイオテクやグリーン・テクなどだ。同社で働くスタッフ全員がテクノロジーに長けており、最新テクノロジーのために保険を手配することを楽しんでいる。オーナーのマレック氏曰く、「新しいIT会社のために適切な保険プログラムを手配することに生きがいを感じています。これまで存在しなかったリスクに対応するための保険を手配するのです。新しいリスクついて保険会社のアンダーライターと話すのは面白いです」とのこと。

シリコン・バレーに多額のベンチャー・キャピタル資金が流れ込んいるが、エージェントの多くがテクノロジーを理解していないので対応できない。IT関連の新しいリスクを理解しているアンダーライター（保険会社）もまだ多くいない。実際、わずか6ヶ月前には存在していなかったリスクをどのようにして引き受けようというのか？マレック氏は、IT企業の保険引受けについて、アンダーライターに教えることも多い。

顧客であるIT企業についてマレック氏は言う：

「テクノロジー関連の会社に働いているのは、若い人たちばかりです。大学生やもっと若い人もいます。テクノロジーについて優れたアイデアを持っていますが、事業を始めるには保険が必要です。そこで当社は、彼らに回答を提供しているということです。我々もテクノロジーが大好きですので」

個人保険分野では富裕層の顧客が多い。シリコンバレー地域の個人住宅はあきれるほど高額である。価格が百万ドル（1億円）以上の住宅のホームオーナーズ保険を頻繁に引き受ける。

新規顧客はすべて紹介によるものである。そのため地域の様々なイベントへの参加やテクノロジー関連事業者とのネットワークを大切にしている。実際、新規顧客の紹介は絶えることがない。顧客に良いサービスを提供しさえすれば紹介の電話が鳴る。「友人が保険で困っている。助けてやってくれませんか？」と。その友人を助けると、その友人の友人からまた、保険手配の依頼電話がある。

スツラトン・エージェンシーは6年前に完全ペーパーレスにした。紙使用の環境からペーパーレスに変換するのは勇気がいった。しかし、この6年間で生産性が大きく改善された。間接費が大幅に減り、おかげで顧客サービスの質を上げることができた。同社の一人当たり収入の高さ（2千6百万円）は、テクノロジー活用によって、異動処理や保険付保証明書の発行業務に要する時間の大幅短縮のおかげである。

新規採用に際しては、保険業の経験ではなく、テクノロジーに長けているかどうかを基準にする。マレック氏曰く、「新規採用者に保険を教えることはできますが “テクノロジーに対するセンス”を教えることはできません。テクノロジー利用が体の一部になっている若い人を雇用します。彼らはテクノロジーを自在に操り、ペーパーレス業務にすぐに慣れます」とのことである。

完全ペーパーレスを実践するには、標準申込書や保険会社汎用のエージェンシー管理システムが必要となる。即ち、保険会社の協力なくしては、ペーパーレスによる生産性向上は達成できない。何故、日本では標準申込書を採用しない（できない）のであろうか？日本の保険会社から、どれだけ多くの方が、一体何年前から、米国アコード社を訪問し、標準化に関する報告書を書いていられるんだろうか？立派な報告書をまとめるだけですか？ご訪問の目的は？

（インスウォッチ、2013年10月掲載）