付加価値サービス(2013年9月)

付加価値サービス


ビジネス

顧客に様々なサービスを提供するエージェンシーが増えている。レーガン・コンサルティングによる最近の調査によると、顧客に付加価値サービスを提供するエージェンシーが増えていることだけではなく、これらのエージェンシーの成長率も伸びていることが明らかになった。

販売に積極的なエージェンシー100社を対象に行った調査で、その5分の4(80社)が、少なくとも、一つの損害保険リスクに関する付加価値サービスを提供している。4社の内、3社が従業員福利厚生プラン

更に、損害保険に関わる付加価値サービスを提供しているエージェンシーの成長率は2.6%で、そうでないエージェンシーの成長率の二倍であった。

「市場における競争の動力を考慮するに、保険ブローカーは提供する付加価値サービスの質で競争しなければなりません。彼らが、もし、スプレッドシートに見積金額を提供するだけでは顧客を獲得することはできません」

多くのエージェンシーが従来から付加価値サービスを提供してきた。しかし、この慣習は2007年-08年の経済恐慌以降、エージェンシーの多くが保険手数料の減収を補うべく広まった。今、経済は立ち直りすつつあるが、数年前に開始した付加価値サービスの提供を取りやめるどころか、むしろ、それへの投資を増やしている。

正に、ブーシャード保険がそれにあてはまる。同社は労災保険を専門とし、損害予想についての分析や経験修正料率を確認したりする、と社長のレイ・ブーシャード氏は言う。

「当社はこの経験修正の計算のみを行うスタッフを三人雇用しました。彼らは、終日、全米労災保険会議(National Council on Compensation Insurance;NCCI)から発行される統計データを基に、経験修正の計算だけをしています。当社は、NCCIのデータと比較するためのソフトウェア‐顧客の給与総額と損害データを入力し、経験修正率を出す‐を開発しました」

このようなサービスは、顧客の維持と、新規開拓に益々重要になっている。保険商品の提供以上である。

「当社のプロデューサーが見込み客と話し合う時には、保険の提供ではなくサービス提供について話します。先ず、既存の経験修正の見直しを提案します。当社のソフトウェアを活用して、顧客の経験修正をチェックします。間違いを見つけ、それが顧客の保険料を節減するようであれば、その節減分を50‐50で当社と分けます」

そして言う:

「勿論、私たちが顧客に求めているのは、ブローカー指名書に署名してもらうことです。そして、大抵、指名書を獲得することができます」

サービスを売りにしているエージェンシーの多くがこのように付加価値サービスに益々力をいれるようになった。

スタイプ氏は言う:

「いまや、プロデューサーが、2,3人の専門家を引き連れて、顧客の店舗を訪問するのは普通の状況になっています。プロデューサーは、クォーターバック(アメリカン・フットボールで、チームの攻撃プレーを指揮する役割)で、ボールをその他の重要な人々に投げ、チームでタッチダウンを目指していといえばよいでしょう」

付加価値サービス

付加価値サービスを見込み客や顧客に提供するにあたり、多くのエージェンシーが、既存のスタッフに技能を身につけさせるのではなく、専門家を雇用している傾向が見られる。これらの専門家は、従業員福利厚生プランのコンサルティング、クレーム管理、リスク・マネジメント、損害制御、職場の安全管理などに長けた人たちである。

しかし、このようなサービスを提供する理由は、フィーではない。エージェンシーのオーナーとしては、自社の価値を他社と差別化させることによって、競争的な市場で、自らの立場を確立するためなのである。従って、サービスはしばしば無料で提供される。

バーニー&バーニー社のスティーブ・シェイ社長は言う:

「顧客は当社の提供するサービスに対し、支払いはしません。当社が費用を負担しています」

これら付加価値サービスに要する費用は小さいわけではない。バーニー&バーニー社には労災保険のリスク管理およびクレーム処理担当者が14人がいる。彼らは保険を販売をしないが、新規獲得と顧客維持を大きく支えている。

シェイ社長は言う:

「多くが保険会社でクレーム・アジャスターとして働いていました。彼らはこの分野の専門家です。準備金がどの程度になるかもわかりますので、準備金設定にういて保険会社と交渉することができます。彼らは、また、クレーム対応において、保険会社の対応を厳しく監視します」 「当社の共同経営者はこれがとても重要なサービスであることを認識しています」

MHBT社にとって、特別なサービスを提供することは、競争において必須であるという。同社では経費の8%〜10%を付加価値サービスに充当している。COOロビー・スミス氏は言う:

「当社が顧客ターゲットを店舗から中規模企業に変えた時、付加価値サービスを増大させなければなりないことに気づきました。顧客あたりの手数料収入は8年前の2倍になりました。そして、サービス経費もそれと歩調を合わせています」

MHBT社は労災保険のクレーム分析、解決法、リスクモデリング、職場の安全ガイド、およびロスコントロールにおけるアドバイスを提供している。

「当社は、最近は契約見直しのサービスも始めました。様々契約書に含まれる保険条項を顧客が理解した上で署名できるようになります。これはよりレベルの高い顧客サポートです。契約書見直しは、顧客の行う買収や、子会社の売却などに関する契約書も含まれます。リスク移転の観点から、顧客がちゃんと保護されているか、否かをチェックするためです」

これらのエージェンシーには付加価値サービスを提供する専門家がいるが、グリーン・ヘイゼル保険グループは、Zywaveのソフトウェアを使って、リスク・マネジメントのツールにアクセスし、顧客のリスク管理をサポートする。

グリーン・ヘイゼル保険グループのオーナー/CEOのチップ・グリーン氏は言う:

「私たちは、顧客に、OSHA(用語集)の最新情報を提供しています。更に、フリート契約者に安全プログラムを提供しています。当社は彼らに対し、リスク・マネジメントサービスを提供することを当然であると思っています」

従業員福利厚生プラン

従業員福利厚生プランを提供することに利点を見出しているエージェンシーもいる。時に、医療保険改革法が複雑なので、その分野で顧客にアドバイスを提供している。

バーニー&バーニー社のシェア社長は、アクチュアリーを二人雇用し、従業員福利厚生プランの損害データを利用して、顧客に、損害率と保険料の変化を教え、そして保険会社と交渉する。

バーニー&バーニー社が自社で開発したアトラスというソフトウェアは、医療保険改革法によって施行される規制法によって顧客に義務つけられていることを理解するのを助ける。改革法による財務上の影響を最小化するために、そのソフトウェアは、5年〜7年先を見越して準備できるようサポートする。

加えて、シェア社長は弁護士をスタッフに加えた。顧客企業の雇用慣行賠償責任や役員賠償責任のリスクについてアドバイスするためである。

ブシャード保険が雇用しているフルタイムの人事コンサルタントは、顧客企業の医療保険改革法のコンプライアンスや、雇用慣行賠償責任のリスクについてアドバイスするためである。

MHBT社の従業員福利厚生プラン担当者は、幅広いコンサルティング・サービスを提供している。サービスには、医療保険改革法のコンプライアンス、ウェルネス・プログラム、コールセンター(MHBT社独自の)、顧客企業の従業員が自身の401(k)プランをチェックしたり、住所変更をしたり、税額を調べたりするためのテクノロジーを提供している。

スミス氏は言う:

「顧客が、医療保険改革法後の従業員福利厚生プランをどのように組み立てていくかを理解できるようにアドバイスするサービスに、多額の費用をつかっています。特に、季節によって従業員数が変化するホテルなどのサービス産業や建設業者の顧客にはこの様なサービスが求められています」

どの程度の費用をこれらのサービスに使っているのだろうか?

「5年前、従業員福利厚生プランの収入に対する2%を付加価値サービスに要する費用に充てていました。しかし、今は7%近くを充てています」

TCOR社は従業員福利厚生プランのコンサルティング提供だけでなく、付加価値サービス提供ために全く別の部門を設立した。共同経営者の一人、リック・ダッドニー氏は言う:

「当社は人事コンサルティングを専門としています。顧客企業の従業員の健康、職場の安全性、環境について助言をし、監査します。建設業者の場合、下請け業者の管理もします」

6人の専門家(7年前には一人であった)がこれらのサービスにあたっているが、今年、また一人増やす予定である。 ダッドニー氏は言う:

「これらのサービス提供においてはこの数年間、損益なし(収支トントン)でしたが、昨年やっと利益を上げました」

グリーン氏も、医療保険改革法(に加え、従業員退職所得法(ERISA)や医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律(HIPAA)のコンプライアンスのために、Zywaveのソフトウェアを利用している。また、ウェルネス・プログラムの作成の援助も行う。ダッドニー氏は言う:

「当社の目標は、顧客の医療コストの引き下げを助けることです」

これらのエージェントは、彼らにとって付加価値サービスとは、顧客の事業を脅かす財務上のリスクから守るための高価なサービスである、という。

スミス氏は言う:

「このサービスの提供によって顧客の維持率が高くなります。大手ブローカー、例えば、マーシュやウィリスやエーオンは、もしこれらの付加価値サービスを提供しないと、競争相手に顧客を奪われてしまうことを理解しています。これらのサービスは、今や、ビジネスを行うための当然のコストとなっています」

レーガン・コンサルティングのスタイプ氏は、このコストは、将来収入に換わるコストである、という。

「エージェンシービジネスの次の段階は、特定の業種に特化して、サービスを提供することになるでしょう。もし、御社が建設業者を主たるターゲットとしているならば、建設業のクレーム対応における専門家を当社のスタッフに加えると良いかもしれません」

ブーシャード氏も同意する:

「我々は、顧客企業のパートナーとなって顧客企業をサポートすることです。低保険料の保険を提供することは易しいことです」

ライフ・サイクル・アプローチ

ファースト・ナイアガラ・リスク・マネジメント社は、付加価値サービスに資源を投資し、今や、社名も現状に変えた。マネジング・ディレターのジェンセン氏は、ライフ・サイクル・アプローチを利用するという。それは、顧客がリスクを認識するところから始まる。同社は業界エキスパートと商品エキスパートを雇用している。

「業界エキスパートは、地方自治体や建設業者、商品エキスパートは労災保険、保証、医療過誤賠償責任を担当しています」

エージェンシーのアプローチは、レーガン・コンサルティングの調査結果とおりである。即ち、エージェンシーが専門化する場合、業種に特化するか、または、商品に特化するかの二種類があり、ファースト・ナイアガラ社は正に、それを実践していることになる。大抵のエージェンシーが、それぞれのタイプにおいて一チームを作っている。レーガン・コンサルティング社のスタイプ氏は言う:

「どちらのケース(業種に特化するか、商品に特化するか)であっても、それを実践していないエージェンシーよりも成長率は2倍となっています」

ファースト・ナイアガラ社は400人の従業員を擁しているが、約50人が、リスクコントロールに業務に就いている。彼らは、OSHAの見直し、人間工学に関するアドバイス、クレーム・コンサルティングや評価、労災保険の経験修正率のチェックなどにあたっている。

更に、企業の従業員福利厚生プランの管理にも携わっており、その為に、同分野の専門家を雇用した。

個人顧客へのサービス

富裕層を対象に個人保険を扱うエージェンシーも、単に保険販売以上のサービスを提供している。

ウォルシュ・ダフィールド社の個人保険部門の責任者マイク・ガーベル氏は、同社の富裕層顧客に対し、年度リスク・マネジメント評価をしている。

「当社にはVIP顧客(富裕層や企業顧客の重役など)を担当するスタッフが三人います。この三人は、毎年、VIP顧客のリスクや既存の補償内容を見直し、提案や助言をします」

VIP顧客に直接会い、新しく購入した不動産や動産について、特約やアンブレラ賠償責任の限度額変更などを行う。

C.H.エドワード社も個人顧客に年一度、リスクとカバーの見直しを行う。社長のビスコ氏は言う:

「当社では4人のCSRが毎日の仕事として、リスクとカバーの見直しをしています。各人が毎日顧客5人に電話しています。これによって、クロスセリングやアップセリング(特約や限度額引上げによって保険料を増やす)ができるのです」

ウォルシュ・ダフィールド社のガーベル氏は、言う:

「これらのサービスは益々競争が激しくなる市場では必須です。保険の販売なんてのは、仕事の一部に過ぎません」

(インスウォッチ、2013年9月掲載)


 

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