集合体(2013年7月)

保険会社にもエージェントにも利益をもたらす集合体


現在、独立エージェンシーの3分の1が集合体に加盟している(IIABA調べ)。規模別に言うと、最小規模、即ち手数料収入1億2千5百万円未満(クラス1)の独立エージェンシーの32.4%、それよりひとつ大きい規模‐収入1億2千5百万円以上〜2億5千万円未満(クラス2)‐の41.2%が加盟している。更に、最大規模‐収入が25億円以上(クラス6)‐の40%が集合体に加盟している。

クラス1、2の規模のエージェンシーと、クラス6の規模では集合体加盟の目的は異なる。小規模エージェンシーの場合、集合体加盟の目的は多くの保険会社の商品を扱うことであり、大規模エージェンシーの場合は、遠隔地(国内、海外)の顧客に、集合体のメンバーを通じて、サービスを提供することである。

日本の代理店の方から受ける質問に「保険会社は集合体の形成に関与しますか?またはサポートを提供しますか?」があるが、答は「しません。」独立エージェンシーが生き延びるために、自ら、形成するのが集合体である。保険会社のコスト削減対策に対する独立エージェンシーの対応策が集合体の形成または加盟である。要するに、保険会社はコストを削減すべく、エージェンシー一社あたりの年間取扱収保を引上げるが、それに対応すべくエージェンシーが保険料を集約し、年間取引収保要件を満たすために実施するのが集合体の形成やそれへの参加なのである。

例を挙げよう。年間最低取引高を3千万円としていた保険会社が「再来年から最低取引収保を4千5百万円に引き上げます。この要件を満さない場合、委託契約を解約します」と言う。それが1社だけなら良いが、全取引保険会社が同様の要求をしてくる。そうなると、5社それぞれに3千万円の保険料を付保していたエージェンシーは、再来年は、契約高を50%増にしない限り、5社との委託契約は維持できない。わずか2年で契約を50%増にするのは困難である。しかし、そうしない限り、せいぜい二社か三社としか委託契約を維持できなくなってしまう。それは“独立エージェント”としての価値を下げることである。独立エージェントの価値とは、顧客に様々な保険のオプション(値段と商品内容)を提供できること;5社よりも10社、10社よりも30社、30社よりも100社の保険を扱うことにより、販売機会が広がる。ターゲットとする顧客の業種幅や販売地域が拡大するので、売上も上昇する。

集合体の本部(コア)は、メンバーであるエージェンシーの「経理部門」と言ってもよい。本部は、メンバーの保険料を集約し、保険会社に保険料を、メンバーに手数料を払う。加えて、業績(ボリューム、損害率、継続率、新規開拓率など)が良い場合、年に一度支払われる付随手数料(ボーナス手数料)をメンバーに振り分ける。メンバーそれぞれの業績(ボリュームや損害率など)に合わせて支払うので、計算はかなりややこしい。従って、成功している集合体というのはシステム(ソフトウェア)が優れている、と言われる。米国最大規模の集合体SIAA(メンバー数4,500社)の成功要因は、正にシステム開発力とのことである。

集合体形成が可能である理由は、米国には、「副代理制度」や、「管理総代理制度」があるからだ。これらは、保険会社と小売販売者(消費者に‘直接に’保険を販売するエージェント)間に、もう一つ媒体、即ち、卸売り業者が介入できる制度である。この「副代理制度」も「管理総代理店制度」も保険会社の利便性(主にコスト)から生まれたものだが、いまや、独立エージェントと保険会社の両者に、コスト削減や取引の柔軟性という利点を提供している。

保険会社は集合体の形成にサポートどころか、一切関与しない。実際、保険会社は集合体(当時はクラスターと呼ばれていた)が設立され始めた頃(80年代)、クラスターを快く思っていなかった。それは、保険会社としては、エージェンシーを、直接、監督したいからである。そして、集合体の本部と取引をすることにより、‘質の低い’メンバーの契約まで引受けなければならなくなるのではないか、という心配があったからである。しかし、現在、それについては問題はない。理由は、集合体の本部が、メンバーの選択に以前よりも厳しく慎重になった。又、アンダーライティングも、昔よりも厳しく行うようになった。

保険会社にとって、エージェンシー一社あたりの取引収保を増やすことはコスト削減につながる。一方、マーケット・シェア拡大のためには、販売拠点、即ち、取引エージェンシーを増やさなければならない。この二つの目的を適えてくれるのが集合体なのである。集合体との取引によって、販売拠点を増やすことなく(従って、コストを増やすことなく)保険料増大を達成できるようになる。ある大手保険会社は、「上位5つの集合体は、エージェンシー6千社を代表しています」と言う。要するに、この保険会社が取引している集合体(5つ以上)の内、取扱保険料の大きい上位5つの集合体のメンバー・エージェンシー数を合計すると6千社になるということだ。

無駄とは知りつつ言う:

「保険会社の皆様へ: 生産性の低い、御社に利益をもたらさない代理店さんには『委託契約は2年以内に解約する』と伝えてはいかがですか?委託契約を維持できなければ代理店を経営できないのだから、自ら、生延びる方策を考えますよ。販売について知識・経験のない保険会社が、販売(代理店の経営指導だとか、販売戦略作りとか)に関わるのは止めたほうがいい。保険会社は、消費者が『この保険はぜひ、必要だ!』というような商品作りに専念してください」

(インスウォッチ、2013年7月掲載)


 

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