米国リポート (2003年11月)

サープラス・ライン(=事業非認許)保険会社


米国では保険は州規制下にあり、保険会社は州の事業認許を取得しなければならない。事業認許保険会社(Admitted Insurer)とは保険契約者が本拠地とする州で事業することが許された保険会社である。一方、事業非認許(Nonadmitted)という保険会社の存在もある。事業非認許保険会社とは保険契約者が本拠地とする州で営業免許を取得していない会社である。ここで注意していただきたいのは「保険契約者が本拠地とする州」で営業免許を取得しているか否かが区別の基準になる点である。例えば、カリフォルニア州に本拠地を置く被保険者にとって、同州の事業認可を有していない保険会社は事業非認許保険会社ということだ。ただ、非認許という言葉は響きが良くない為サープラス・ラインという表現が使用されている。

サープラス・ライン保険会社の誕生については1800年代にさかのぼらねばならない。当時は保険法が制定されておらず東部の数州の会社法に準じて(認許法でなく)保険会社が設立されていた。規模は小さく十分な支払準備金を備えていなかった。ボストンやシカゴで大火災が発生した時、保険金の支払ができず倒産する会社が多く現れた。その結果顧客は州内に保険会社に見つけられず、他州の会社にカバーを求めた。これがサープラス・ライン保険会社の始まりである。現在は保険法のおかげで1800年代のような問題は発生しない。それでもサープラス・ライン保険会社の目的が認許保険会社のキャパシティー(引受許容能力)を補う点は変わっていない。彼らは地震やハリケーンなどの巨大災害、特殊なリスク、例えば人工衛星の損害危険、様々な専門家職業賠責のリスクに対応している。

  非認許といえども規制を受けないということではない。全州がサープラス・ライン保険会社の事業を監督している。サープラス・ライン保険会社が認許保険会社と異なるのは料率算出規制を受けず、強制の保険プールに参加する必要が無い点である。税金や年次報告書の提出義務も認許保険会社のそれとは大きく異なっている。サープラス・ライン規制法に含まれている項目は、1)顧客はサープラス・ライン・ブローカーを通じてのみカバーを取り付ける;2)事業認許保険会社が高リスク又は高限度額の為引受不可能な場合や引受け拒否の場合においてのみ、サープラス・ライン保険会社を利用することができる;3)サープラス・ライン保険会社が州保証基金でカバーされていないことを顧客は認識しなければならない。即ち、州保険庁はサープラス・ライン・ブローカーという州免許を有した媒体を通じてサープラス・ライン保険会社を監督し、税金を徴収している;消費者は認許保険会社を優先して利用することを義務付けられている;サープラス・ライン保険会社が支払い不能となったとしても顧客の責任である;ということだ。

  サープラス・ライン保険は米国保険業界の多様性を示す一例である。

(2003年11月インスウォッチ掲載)


 

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