米国リポート (2003年10月)

IIABA年次大会参加リポート


米国で最も古く最大規模の独立エージェント協会、IIABA(アメリカ独立エージェント&ブローカー協会)の年次大会が9月21日から4日間ラスベガスで開催された。1896年シカゴでの第一回目年次大会には地方団体の20人の代表者が集まった。今年で108回目の大会には3千人が参加した。

米国の独立エージェンシーの75%が加盟しているIIABAは50州とワシントンDCの州協会の連盟である。IIABAの主要目的はエージェンシーの経営や業界に影響を及ぼす連邦や州規制法を監視し、ロビー活動を通じて特定の法案に支持又は反対を唱えることだ。例えばIIABAが関わった法案には金融サービス・プライバシー、エージェント免許改革、テロリズム保険、年金改革、管理医療等が含まれる。 IIABAは保険会社との関係改善にも重要な役割を果たす。100年前の設立当時は営業認可、責任準備金、料率設定等に関わる保険業法はまだ整備されていなかった。その為独立エージェントは料率引下げの過当競争による保険会社倒産、手数料の急激な引下げ、満期更改権の所有、直販など多くの問題に直面していた。これらに対処するには全米の独立エージェントが団結して規制者や保険会社との交渉にあたらなければならなかった。保険会社と、ある時は協力し、ある時はボイコットや訴訟を通じて対立した。100年後の今IIABAの活動は殆ど変わっていない。

  22日の総会ではプログレッシブ、チューリッヒ、メッツライフ等大手保険会社5社のCEOによるパネル・ディスカッションが行われた。市場動向について当分ハードマーケットが続くこと、更に、アスベスト賠償責任リスク、低労災保険料率、低金利等の業界に与える悪影響が指摘された。アスベスト賠償リスクが今後も市場を脅かすという点にはパネリスト全員が一致した。80年代と90年代のアスベスト訴訟において被告は大企業―企業数にして300社―であった。しかし現在被告企業数は数千社に及び、大手企業だけでなく中小企業も含まれている。アスベスト問題に関与する企業は米国商務省の業種コード82種類の内44業種に上るとのことだ。これは中小企業を主たる顧客とする独立エージェントにも多大な影響を及ぼす。何故なら多くの保険会社が40年代から 70年代に引受けた契約のアスベスト損害に備えて責任準備金の引上げを余儀なくされているが、十分な資金を調達できない保険会社は撤退又は支払不能となるからだ。独立エージェントはアスベスト訴訟に直面する企業客の対応に加え、保険会社の減少についても憂慮しなければならない。CEOの一人はアスベスト改革法案に対し独立エージェントのサポートを求めた。アスベストは独立エージェントが保険会社と協力して解決しなければならない重要問題の一つなのである。

  22日の午後はIIABAのカンター会長や様々な部門担当者から協会の活動について話を聞いた。特に日本からの参加者の興味を引いたのは商品開発と総代理店としての保険販売である。現在会員用と一般顧客用それぞれ数種類の保険がIIABAを通じて販売されている。会員用の保険?例えばエージェントE&O専門家賠責や従業員福利厚生プラン?の契約がまとまるとIIABAは代理店として手数料を得る。又、会員が企業や個人にイベント賠償責任保険や富裕層用ホームオーナーズ保険などを取り付けるとIIABAは総代理店として手数料を得る。この手数料収入のIIABA収入総額に占める割合は50%を超える。

  会員への情報提供と教育も本部の重要な責務である。エージェンシー経営/管理、最新テクノロジー、商品、保険会社の戦略等に関わるニュースやレポートが定期的に会員に提供される。エージェンシー経営/管理では、スタッフへの報酬システム、雇用契約、人材開発、販売管理、リーダーシップ等について同業他社の成功例が含まれる。常に最新情報にアクセスし自社の経営改善に努めることは生き残るために必須なのである。

  IIABA銀行の設立も日本からの参加者にとって驚きであったようだ。5年前にIIABAと個人投資家それぞれ50%の投資によって設立された。目的はエージェンシー買収資金や設備投資金の融資、会員の顧客に対する銀行サービスである。例えば、自動車ローン、住宅ローン、クレジット・カードの発行などが含まれている。

  翌日はラスベガス近郊のレビット保険グループを訪問した。小規模エージェンシー85社を傘下に持つ。グループ全体の取扱収入保険料は現在3億5千万ドル(388億円)に達している。本部はメンバーそれぞれの60%の株を所有している。本部は総代理店として機能し、更にシステム管理や経営コンサルタンティングを提供する。総代理店として機能する、即ち、小規模エージェンシーが独自で手配できない商品についてはレビット本部が保険会社と委託契約を締結しカバーを取り付けるということだ。顧客管理については本部のメイン・コンピュータを利用し、更に経営については本部のコンサルティングを受ける。本部による60%の株所有というのは珍しい特徴であるが、同グループもクラスターの一種であることには違いない。

  最終日の総会でのパネル・ディスカッションで印象に残ったメッセージは次の2点である。@ブローカーの大型化が進む。大型化によって資金に余裕ができ様々な引受保険会社(ロイズやエクセス・サープラス・ライン)へのアクセスが容易になり、スタッフへのトレーニングにも資金を投入できる。これら大型ブローカーと対抗するには知識の拡大とテクノロジーを活用することである。そしてA若い人材を積極的に採用すること。

(2003年10月インスウォッチ掲載)


 

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