米国リポート (2003年7月)

規制法の遵守(その2)


規制法遵守に関わる問題
  規制法に従うのは当然であるが過剰な対応は業務を滞らせる。規制法や保険会社の販売ガイドラインの厳しさはエージェントやエージェント・マネジャー(保険会社に属するエージェント管理担当者)の業務に影響を与える。例えば、申込書の質問項目が増え、エージェントは以前より顧客とのインタビュー回数を増やさなければならなくなった。又、エージェント・マネジャーはエージェントが記入した申込書を以前より念入りにチェックしなければならず申込書の処理に長い時間を要するようになった。申込書に空欄があった場合 − たとえその質問項目が法規制とは無関係であっても − 申込書の処理を次の段階に進めない保険会社もある。
更に、エージェント・マネジャーはエージェントの監視と申込書チェックに多くの時間を費やすために、他の業務、例えば、販売トレーニングや販売の奨励を行うことができなくなってしまう。その結果、エージェントの事務処理に不正がないかどうかをチェックする目的のために、別の担当者を雇わなければならなくなるケースもある。


要因
法規制遵守に関わる最大の問題は法律文書の難解さである。一般的に、法律文書は明確でなく具体的なガイドラインは含まれていない。例えば、「何々を守るように」と記されているが、「どのようにしてそれを守るか」について具体的な指示の記述はない。保険会社は、このような不明確な法規制に違反することを恐れ、事務処理手続きを必要以上に複雑にしてしまうようだ。
 2番目の要因としては流通チャネルの併用である。現在保険会社は様々な流通チャネル−例えば、専属エージェント、独立エージェント、銀行、直販等―を併用している。一つの流通チャネルに適用される販売規則は必ずしも他のチャネルにとって必要とは限らない。が、法規制の遵守に関してチャネル毎の対応がなされていないことが多い。不要な販売規則に従うことに時間を費やしている。法規制を遵守した上で、事務処理の合理化又は簡素化が必要なのである。
3番目の要因は保険会社が規制法の対応に不慣れであるという現実である。保険会社は規制法の遵守に気を取られるあまりに柔軟な実践方法を考えることができないようだ。法規制の目的である「消費者の利益保護」と「エージェントの事務処理の簡素化」に焦点を当てなければならないのであるが。 
 

対応策 
販売手続きの合理化を進めるためには、保険会社は、先ずエージェントやその他の販売担当者に法律遵守に伴うどの部分の販売業務が彼等の業務を遅らせる元になっているのかを尋ねるべきである。問題点が明らかにされ修正された後はエージェントにチェックさせること、更に、合理化が実現されるまでエージェントを関与させることが必要である。
  次に、支店のエージェント・マネジャーも販売手続きの合理化プロセスに関与させること。規制法遵守に伴う業務の複雑さに対するエージェントの不満の矛先を受けるのは、エージェント・マネジャーや支店長、そして本店のエージェント管理担当者であるからだ。問題を最も認識している彼等の協力は必須である。
 本社のスタッフも合理化に関与することは当然であるが、保険会社によってはそれがむしろ障害となるケースがある。即ち、合理化によって自身の職務が不用になることを心配し、正しい業務分析を行わないかもしれない。人は自身が作り上げた業務手続に問題点を見つけることをためらうものである。
適切な規制法対応を実践している保険会社

 米国では保険会社と同様に独立エージェントも州保険庁の直接の管理化にあり、販売慣行に関わる規制法に準拠することになる。従って、独立エージェントが取引保険会社を選択する際の要件は、商品幅、商品(補償)内容、保険料、手数料率、支払能力、顧客サービスの種類や質であるが、これらに加え、規制法遵守に関するサポートの有無も重要な選択要件となる。

規制法に適切に対応し、エージェントへのサポートに前向きな保険会社とは?次はエージェントの挙げる「規制法対応に優れた保険会社」の要件である。

1. 最新の商品説明パンフレットを提供している:商品紹介パンフレットには当該商品の最適な被保険者について十分な説明がなされている。分り易い表現を用い、商品の利点とリスクを紹介した「保険のしおり」の提供は必須である。当該保険がカバーする範囲、即ち、免責部分を明確に説明したパンフレットは後の訴訟の発生を防ぐ

2. 販売慣行に関する最新の規制法対応策を用意している

3. 規制法遵守に関する明確なガイドラインを作っている:保険約款は顧客が誤解しないような表現が使用されており、又、申込手続きに関するガイドラインも理解し易い。

4. 規制法に関わる問題に対しアドバイスを提供する:規制法について質問がある場合に問い合わせるべき担当者と連絡先が明確にされている。エージェントが規制法について気軽に質問できるようなシステムが用意されている。例えば、エージェントが、「質問の内容を基に評価されるのではないか」、といった心配をしないで済むようなシステムである。

5. エージェントが規制法に準じて申込書処理を行っているかを常にチェックする:申込書の処理に不備がないかどうかを問題が発生する前に認識し訂正する。

6. 規制法について定期的な情報を提供する:規制法についてエージェントに定期的なニュースレターを送り、エージェントの注意を喚起する。

7. 教育を推進する:エージェントが商品内容、事務処理、マーケティング手法等について正確な知識を有していれば規制法違反の問題は発生しにくい。規制法遵守のためのサポートは、エージェントの業務レベルを高めることから始まる。教育サポートには教材の提供、セミナー、個人トレーニングが含まれる。

8. 規制法に遵守しているか否かをエージェント自らチェックできるシステムを提供する:チェックリストや自己採点用のテストを提供する。エージェンシーが自社スタッフを教育する為の資料も提供する。

* * *
最後に、合理的な規制法遵守のシステムを実践する際に最も重要なことは、経営上層部のリーダーシップである。彼等のリーダーシップの下に、法規部、商品開発、アクチュアリー、マーケティング、契約者管理、アンダーライティング等 − 全ての部門の代表者から形成される総合チームによって実践されなければならない。そして、繰り返すが、エージェントとエージェント・マネジャーの参加が必須であることは言うまでもない。
以上
   
(注)生命保険マネジメント協会(Life Office Management Association; LOMA): 60カ国に1,250社の会員を有する。会員は生命/医療/年金保険会社、銀行、その他に金融機関。 会員会社の経営の促進を目指す。 1924年に米国とカナダの保険会社によって設立された。

(保険毎日2月28日掲載)


 

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