米国リポート (2003年2月)

独立エージェンシー/ブローカー専門家職業賠償責任保険(その2)
(Insurance Agents/Brokers Errors & Omissions)

見出し

米国では保険エージェントやブローカーが職務の遂行上の過失に基づいて他者に損害を与え、訴訟を起こされる危険性は医師や弁護士と同様に高い。エージェントのE&Oクレームの最大の原因は、顧客のために適切な担保内容の保険を手配しなかったことである。そのような事故を防ぐ為には、顧客のリスク調査に際しては、包括的な報告書の作成や顧客とのコミュニケーションの詳細な記録管理が必須である。その他の事故発生理由としては、書類の欠落やファイルの処理過程でのミスを挙げることができる。

本文

損害の原因

損害を発生させる2番目の原因は手配した保険やその他のリスク処理方法が不十分であった、又は、顧客の書類に欠落がありそれに対する処置が不完全であったことである。3番目はエージェントの内部業務から発生するミスである。それぞれクレームの具体例、発生過程、コントロール手法を挙げよう。

2.手配した保険やその他のリスク処理方法が不十分

例えば、保険会社の破産がこのカテゴリーに含まれる。保険を手配する前に、保険会社の財務状況の健全性を調査するのはエージェントの当然の責務である。従ってエージェンシー社では保険会社の財務状況に関するリポートを購読し、財務状況が悪化している保険会社との取引を停止することをスタッフ全員に徹底させている。その他支払いがおりたクレームの例を挙げると:

Ø 再保険会社の破産
Ø 総代理店(注1)の破産
Ø サープラス・ライン・ブローカー(注2)の破産
Ø 担保内容を拡大するための特約や裏書処理を行う過程においてのミス
Ø 顧客宛書類や険会社宛書類の一部が欠落していた

このような事故は業務遂行上のどの過程で発生したかというと:

Ø 保険会社の破産が決定となる前に、格付け会社や州保険庁はリポートで警告するものである。しかし、これらのリポートを定期的にチェックしなかった
Ø 被保険者から保険の中途解約、或いは、更改しない旨の連絡を受けた。後、保険は有効となったが、書類の一部が紛失した。

これらの損害を防ぐには次のようなオペレーションを慣例化すべきである。

Ø 保険を手配する前に関係各社の財務状況を十分に調査する。関係各社とは保険会社、総代理店、サープラス・ライン・ブローカー等が含まれる。保険会社の財務状況については例えばA.M.ベスト社が定期的に発行している報告書を読み、“要注意保険会社リスト”に留意する

Ø 格付け会社のランクでB以下の保険会社とは取引をしない

Ø 引受け保険会社の財務状況を顧客に知らせる。保険を付帯する前に保険会社の財務状況と日付が記載されたものを顧客に渡し、顧客から承認の署名をとりつける。格付けがトリプルAの保険会社のみと取引できるなら幸いであるが、リスクによってはトリプルAの保険会社が引受けないため、格付けBクラスの保険会社に付保せざるを得ない場合がある。しかし、それは顧客の選択であることを認識させるために署名をとりつけるのである

Ø 電話やミーティングでの会話を書面で記録し保管する:保険会社との通信には標準書式を使用し、全ての関係者にコピーを送付する

Ø コンピュータのフロッピー・ディスクを管理する:全書類のデータを日毎、月毎、及び年毎にまとめる

Ø 特約や裏書のバインダー(仮異動承認書)を発行する前に保険会社からの承認を得る。前号で説明したが、エージェンシーは、保険会社が前もって定めた範囲内のリスクについては、保険の有効性を証明する方法として、仮保険契約書を発効することができる。新規の契約と同様に異動についても有効性を証明するためのバインダー(この場合は仮異動承認書)を発行することができる。しかし、保険会社が認めた範囲を超えるリスクについて誤ってバインダーを発行したことによりE&Oクレームが発生することがある

Ø 担保内容の変更に関する保険会社からの回答など、明らかになったことは必ず顧客に文書で知らせておく。例えば、契約者の17才の息子が自動車免許を取得し、被保険者として追加するように連絡を受けたとしよう。現行の保険会社は17才のドライバーはリスクが高いことから引受けを拒否した。現行の保険会社が引受けを拒否していること、更に、他の保険会社を探索している事実を被保険者に報告する

3.エージェンシー/ブローカーの内部業務ミス 現行

クレームを発生させる3番目の原因はエージェンシーの内部業務におけるミスである。例えば、ペンディング(未解決)項目書類や満期表の管理ミスから発生するクレームである。その他具体例としては:

Ø 入金された保険料を他の被保険者に充当してしまい、保険料未払いを理由に解約してしまった

Ø 更改手続き処理を怠った

これらの事故は次のような状況において発生する:

Ø 更改や異動処理を行うアカウント・エグゼクティブ(顧客管理担当者)や顧客サービス担当者と経理の受取勘定担当者との連絡においてミスが起こった

Ø 現行の保険会社から高リスクを理由に更改を拒否された被保険者に対し、別の保険会社を手配すべきであったのにファイル管理を怠ったため解約されたままになってしまった

クレーム防御方法は:

Ø ペンディング(未解決)項目の書類は毎日ファイルから取り出して処理する。エージェンシー・マネジメント・ソフトウェアには毎朝コンピュータの起動と同時にペンディング項目が表示されるが、このようなシステムを活用するべきである

Ø 週一度未解決項目の全ファイルを取り出して、間違った場所にファイルされていないかどうかチェックする

Ø 満期日を@会計報告書、Aコンピュータからの統計資料、B保険証券の申告頁の控え(保険証券の最初の頁で、契約の基本要件が記されている)の3つの書類を基に照合する

Ø 満期表は月毎に異なった色のファイルを使用する

E&Oクレームがエージェンシーに与える影響

訴訟がエージェンシーに与える影響は、前号で述べた“顧客のリスクを適切に分析しなかった”場合と同様に、営業時間の喪失、保険会社との関係悪化、多額な免責金額の負担などである。ただ、適切な書類が欠落していたことから保険が解約されたままになっていたことにより訴訟を起こされたエージェンシーの場合、その後のE&Oカバーの保険料が相当に引上げられた。それは顧客や保険会社との通信書類の管理は、エージェンシーとしての基本的な責務であるからだ。E&O保険引受会社は、書類の欠落によるクレームの場合、当該エージェンシーに初歩的な管理能力が欠如としているとして過失を重視する。エージェンシーはE&O保険を解約される危険性もある。クレームを避けるためには、申込書、提案書、異動裏書、その他連絡メモなどすべての書類について、受領有無の署名をとりつけることはクレーム予防の一つの方法である。最新のエージェンシー管理ソフトウェアには、E&Oクレーム防御のためのシステムが含まれており、これらを利用することによってリスクを減少させることができる。しかし、最も大事なことは、常日頃からスタッフ全員に事故の可能性を意識させるべく、E&Oリスクに関するのセミナーを受講させることであるようだ。

(注1) 総代理店:保険会社の代理人として一定地域内において自身で保険契約を獲得すると同時に、参加の代理店(Sub-Agentと呼ばれる)を監督しながら担当地域内の契約付保に責任を負う代理店を言う。その担当地域内においては保険会社支店とほぼ同じ権限を有する。

(注2) サープラス・ライン・ブローカー:リスク所在地の州で営業認可を取得していない保険会社(サープラス・ライン保険会社と呼ばれる)と取引を行うブローカーを言う。サープラス・ライン保険会社は州認可の保険会社が引受けないような高リスクや高リスクの商品を取扱っている。サープラス・ライン保険会社は州による料率算出規制を受けず、州強制の保険プールに参加する必要もない。更に、年次報告書の提出義務も認可保険会社のそれとは大きく異なる。このようなサープラス・ライン保険会社と取引を行うサープラス・ライン・ブローカー免許は一般のブローカー免許とは異なり、保証金も高い。


 

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