米国リポート (2003年2月)

会社とエージェントの関係(その2)

オールステート保険会社の場合

前書き

専属エージェント制を採用している保険会社(専属エージェンシー・ライター)は現在、代理店委託契約条件を改定しようとしている。それはガイコやUSAAといった直販会社(ダイレクト・レスポンス・ライター)や銀行や株式ブローカーなどの新流通チャネルとのシェア競争の中で流通コストの削減を迫られているからだ。委託契約条件の改定に対し、専属エージェント達は訴訟という手段で抵抗している。

本文

ステート・ファームのエージェントは、保険会社にあてた訴状の中で、保険会社が:

Ø エージェントに対し会社側のビジネス・プランを一方的に押し付け、個々のエージェントの独立性を侵害している、
Ø 顧客サービス・センターのサービスを利用することにより顧客一人当たり1ドルをエージェントに課している、
Ø 医療保険についてはエージェントを通じての販売を止め(即ち、直販に切り替え)、特定の種目のみ販売することを強制し、手数料率を下げ、エージェントの業務を著しく妨害している、

と主張している。専属エージェント団体が保険会社を訴えたのはこれが初めてではない。オールステート(ステート・ファームに続く全米2位の損害保険会社)の専属エージェントも保険会社に対し訴訟を提起した。

オールステートの場合

オールステートは1931年、シアーズ・ローバックの子会社として設立された。全米最大の総合デパートであるシアーズ社の通信販売顧客へのメールによる宣伝とデパート内の販売店を通じて自動車とホームオーナーズ保険のシェアを伸ばし、全米シェア2位の座を獲得した。1995年にシアーズから独立した。1999年にはエージェンシー・ライターであるC N A保険会社の個人保険部門を買収し、独立エージェンシー3,800社との委託契約を獲得した。地域によってオールステートとエンコンパス(元C N A)のブランド名を使い分けている。前号で述べたが、独立エージェントの方が専属エージェントより手数料率が高い。独立と専属とでは委託契約条件が異なるから当然であるが、専属エージェントとしては面白いはずがなく、C N A買収に伴う独立エージェントの採用は従来の専属エージェントの不評を買った。更に、オールステートの次の戦略は専属エージェントの怒りを増長させることになった。インターネットによる販売とフリーダイヤルによる直販を開始したのである。それら販売手段は専属エージェントを裏切ることになるので行わないと明言していたのであるが。オールステートは他の多くの保険会社の例に漏れず、複合チャネル、即ち、専属エージェント、独立エージェント、インターネット、直販等、多くのチャネルを使って販売する戦略を採用した。そしてこの戦略資金をまかなうために専属エージェントに対し独立を要請した。これまで保険会社が負担していた退職手当、年金、その他の経費をエージェントの自己負担にするよう要求したのである。

オールステート・エージェントの辞職

オールステートの場合、エージェントは専属雇用エージェントと呼ばれ、事業経費、退職手当、年金が支払われていた。しかし、新しい委託契約条件「独立請負プログラム」は、専属雇用エージェント(Captive Employee Agent)を専属独立請負業者(Exclusive Independent Contractor)に変更するものであった。この「専属独立請負業者」というのは矛盾する表現であるが、オールステートの商品のみを販売するという意味で「専属の、独占販売の=Exclusive」であり、オフィスの賃貸費を含む事業費、福利厚生費を自己負担するという意味で「独立請負業者=Independent Contractor」である。前号で述べたステート・ファームは正にこの専属独立請負業システムを採用している。しかし、独立を拒否したオールステートのエージェント1,300人は辞職を選んだ。

平等雇用機会委員会への苦情申立、そして訴訟

オールステートは新しい委託契約条件を提示しエージェントに選択を迫った。独立請負業者となるか、或いは、退職金を受け取って辞めるかのどちらかである。更にその時どちらの選択をしても「法的手段に訴えない」という書面に署名を求めた。これがエージェント達の怒りを買うことになった。これは人権法第7条(雇用において人種、年令、性別などによる差別を禁止する法律)や雇用者年令差別禁止法に反するという主張である。エージェント300人が平等雇用機会委員会(EEOC)に苦情を申し立てた。その内の一人、ハーパース氏は、新しい委託契約条件の真の目的は、老いたエージェントへの福利厚生プラン(医療費や年金)コストを縮小することであると苦々しく語っている。
 
更に、全米プロフェッショナル・オールステート・エージェント組合は、フロリダ連邦裁判所に訴状を提出した。オールステートが委託契約書に違反したというのがその理由である。エージェント組合は:

Ø 保険会社がエージェントに相談なく引受規定を変更した(被保険者の選択に限定を加えた)、
Ø 委託契約書には記されていない売上達成保険料をエージェントに課した、
Ø エージェントが保険会社に紹介した顧客が契約に結びついたのに手数料を支払わなかった、

と主張している。

専属エージェントと独立エージェント

オールステートの元エージェントによると、インターネットで保険会社にアクセスした顧客を紹介された専属エージェントが契約を成立させた場合、通常の手数料(10%から12%程度)の4分の1、或いは、3分の1(従って2.5%から4%)を手数料として受け取る;多くのエージェントはこの手数料の低さに腹を立て影で他社の商品を販売していると語っていた。筆者の所属する独立エージェント・ブローカー協会(IBAウェスト)の集まりに参加するオールステートやファーマーズの専属エージェントの数が年々増加している。彼らは独立エージェント協会のセミナーを受け、独立になるための準備をしているようだ。

但し、独立エージェントになったとしても最低取引収保アップや大規模ブローカーとの競争、顧客の自家保険採用やキャプティブ設立などによる保険離れなど、新たな問題に直面することになるのだが…


 

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