米国リポート (2001年1月)

 マーケティング(2)

ステート・ファーム保険会社

 専属エージェントを通じ、個人を対象に自動車保険、ホームオーナーズ保険、生命保険を販売している全米トップの損害・生命保険会社である。 金融自由化に伴い、住宅ローンや教育ローンといった銀行業も開始した。

 同社のウェブサイト(www.statefarm.com )を開くと、 社名の下に目次が掲示されている。一番右側にある「About Us(当社について)」 をクリックすると、項目が二列で紹介されている。 右側の中ほどに「Kids Stuff(子供のページ)」という項目がある。 これをクリックすると、7才以下、8才から11才、12才から14才、15才以上と年令別に塗り絵やことば遊びにかけて火災やその他のリスクについての教育やトレーニングが提供されている。

 7才以下の子供欄のトップには「政治に関する塗り絵」がある。 これをクリックすると共和党のマークである象、民主党のマークであるロバ、米国の国章であるワシの塗り絵が現れる。 歩行者や信号機の塗り絵もある。 又、火災や救急車を必要とする緊急時に電話する911番へのダイヤルを練習させるために受話器の絵が現れ、9−1−1とクリックすると「よくできました!」という表示が現れる。

 12才から14才までの子供欄の一番下には、貯蓄計算の項目がある。 「Allowance Calculator(貯蓄額計算機)」をクリックすると、左側には上から『初期投資金額』、『毎月の貯蓄』、『利率』、『貯蓄期間』の欄があり、記入し送信をクリックすると、右側に『投資金総額』、『受取り利息』、『貯蓄合計額』が表示される。 

プログレッシブ保険会社

 Y世代に対し自動車保険に関する教育を提供している。 プログレッシブ保険会社は、アメリカ独立エージェント協会(IIAA)が主催している「自動車保険の販売、購入」に関する教育プログラムの主要なスポンサーである。 この教育プログラムは25州の高校300校で実施されている。 プログラムには、教室での保険についての授業やインターン制度、例えば、保険エージェンシー社での実習が含まれている。 若い世代を業界に呼び込むことが目的である。

ガーディアン生命保険会社 

 女性の財務知識(投資や貯蓄に対する)を高めるためのプログラムである。 起業家精神を発揮し、経済的に独立し、地域に貢献した12才から16才までの女子中高生を選出し、ニューヨークに招待し様々なセミナーや会議に招待する。

 昨年その一回目が開催された。 1,600人の応募数から選別された15名はニューヨークに招待された。 ニューヨークでは証券取引所を見学し、女性事業家やジャーナリストによるセミナーやミーティングに参加した。 更に、15人の中から選ばれた3人には大学奨学金が授与される。 一位が受取る金額は1万5千ドル(180万円)である。 今年そのトップに選ばれたメリッサさん16才は、ウェブデザイン用語HTMLを習い、自らオンライン・デザイン会社と設立したとのことである。

 ガーディアン生命保険会社はこのような未来の女性実業家との関係構築に早いうちから努めているのだ。

先ず、同社のサイト、www.glic.com をクリックして下さい。 目次が図の下に表示されているが、その2番目の「Events(行事)」を開いてください。 Girls Going Places がそのプログラムの名称である。

(3)パミッション(許可)・マーケティング

消費者は毎日数通ものダイレクト・メールを受取る。 従って、皆ダイレクト・メールにはうんざりしており、殆ど中身を読まずにごみ箱に捨ててしまう。 そこで、フロリダ州の独立エージェンシー、「ゲートウェイ保険エージェンシー社」は、先ず、顧客に伺いをたてることから始めた。 顧客に質問をしても良いか否かの伺いを立て、良いという「許可」を得た場合にのみ様々な提案についてコンタクトするマーケティング方法である。 顧客へのメールにはレターとアンケート用紙と返信用封筒を同封する。 レターには、担保内容の改善、保険料の削減、新商品の案内などについて連絡をしたいが、興味があればコンタクトする旨を伝える。 このレターの最初の行に次の言葉を追加したことによって、返答率が8%から25%と3倍にアップした。

   “We don’t want to annoy you but we don’t want to ignore you either”.
(意訳:お忙しいところ、お手間をかけたくはないのですが、お得なお話ですので是非ご連絡させて頂きました)

  ダイレクト・メールを頻繁に受取る顧客に同情の意を示しているわけである。

アンケート用紙の質問事項には家族構成や生年月日などの基本情報に加え、顧客の望む連絡方法が含まれている。 質問数も顧客に時間を取らせないように20件から12件に減らした。

 質問項目は例えば:

Ø 保険を全てまとめて包括割引を適用させることについて(@興味なしA興味があるので詳細な資料求む)
Ø コンタクトする場合の方法(@電話A電子メールBファックス)
Ø 電話でコンタクトする場合都合の良い時間帯は?

このメールはゲートウェイ保険エージェンシー社の既存客に送付される。 同社を通じて自動車保険のみを付保している顧客にホームオーナーズ保険や生命保険を販売すること、生命保険を付保している顧客に自動車保険や所得補償保険を販売すること、自動車・住宅・生命保険の包括保険にすること、既存の保険の限度額を上げさせること等が目的である。 これらはクロスセリングであり、既存の顧客データを基に更に情報を収集しマーケティングする意味ではデータベース・マーケティングである。 顧客を増やすことだけに集中するのではなく、既存の顧客の保険料を増大させることが重要なのだ。

このマーケティングによってゲートウェイ保険エージェンシー社が実践しているのは:

Ø 宝石、通信機器、現金などには個別に限度額が設定されているが、追加保険料を支払うことによりこれらの限度額を上げることができる。顧客は通信機器や宝石等の貴重品を新規に購入しても保険の限度額を上げることまで考慮していない

Ø 自動車保険とホームオーナーズ保険を統合することによる保険料割引を提案する

Ø 小規模企業の顧客に対し、雇用慣行賠償責任保険を勧める。この保険は数年前に販売され始めた頃より保険料が下がり、小規模企業でも購入できる商品になった

Ø 消費者が損害保険エージェントから生命保険、医療保険、所得補償保険などを購入することを望む傾向が現れている。 これは先月のクロスセリングの項でも述べたが、“顧客にとっては生命保険も損害保険も同じ保険である。 住宅も自動車も生命も賠償責任も保険であることにかわりは無いのだ。 それらすべての保険に関するサービスを我々エージェントに期待している。 そのような顧客を失望させるべきではない”からだ。

* * * 

上記の例からわかることは:
 
マーケティングを成功させるためには顧客を理解すること。 
マーケティングとは顧客を教育することでもある。
既存データを活用し、更に情報を蓄積することがマーケティングの鍵である。

以上

〈参考資料〉

Ø M.ワインバーグ「新しいゴールド・ラッシュ」インディペンデント・エージェント、2001年4月号、P.18
Ø L.コーダス「新ジェネレーション」ベスト・レビュー、2001年2月号


 

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