米国リポート (1999年9月)

● ハートフォード保険会社とフォードとの提携

ハートフォード保険会社がAffinity Businessの専門家であることはこれまでに幾度か報じてきた。 Affinity Businessとは特定の協会や団体のメンバーに対し保険料を割引した商品を販売することをいう。 同社は1983年にAARP(アメリカ定年退職者協会)メンバーに自動車保険を販売して以来、1996年には同協会メンバーに医療保険や年金保険を販売する契約をもとりつけた。 独立エージェントを迂回した直接取引である。

このハートフォード社は再びエージェントに打撃を与えた; フォード自動車との提携である。

"この提携は独立エージェントの頬を平手で打ったようなものだ。 ハートフォードは表では独立エージェントとにこやかに握手しながら、後ろから野球のバットで我々独立エージェントを打ちのめしている"とIBA Westの元会長ミラー氏は語る。

(にこやかに握手しながらという意味は、以前に同紙面でも報じたが、ハートフォード社が独立エージェントの為にパンフレットを用意したことである。 パンフレットにはハートフォード社名は記入されていない。 複数の保険会社と委託契約を締結している独立エージェントは、パンフレットの空白部分に自社名を印刷して顧客に配布する。 即ち、独立エージェントは、自社のサービス能力や取扱商品の多様性(複数の保険会社の商品)を(ハートフォード社の)パンフレットを通じて宣伝することができるのである。 パンフレット利用が新規顧客獲得に結びついたとしても、必ずしもハートフォードの契約になるとは限らない。 それでも直同保険会社がこのような独立エージェンシーへのサービスを怠らないのは背後から彼等を打つことを止められないからか???????)

今回フォード自動車との提携によって同保険会社は最大の販売契約を獲得した: フォード・モーター社及びフォード・クレジット社との間に締結された複数年の直接販売契約によって、同保険会社は、フォード自動車の所有者及び賃貸者に特殊な保険プログラムを提供することになる。

"この提携によって独立エージェントとの関係が損なわれるとは考えていない。 フォード・モーター社との提携は、顧客に最も容易な保険購入方法を提供するという当社の哲学の一貫に過ぎない"とハートフォード社のスポークスウーマン、シンシア・ミッチナー氏は語る。

ミッチナー氏は、語る;

"統計によると消費者の90%が独立エージェントを通じての保険購入を望んでいるが、10%はその他のチャネル、例えば、団体やフォードのような組織を通じて保険を購入したいと考えている"

フォード・モーターの顧客は同時に独立エージェントの顧客でも有り得るのではないか、との問いに対し、ミッチナー氏は"もし、顧客が独立エージェントのサービスに満足しているならば他の販売チャネルに変えることはないでしょう"と答え、"現在、フォード・モーター社の顧客の中で独立エージェントを通じてハートフォード保険会社に付けている契約者に対しては、このプログラムを販売しない"ことを強調した。 "このプログラムによって独立エージェントのビジネスを奪うつもりはありません"と。

"我々はハートフォードが、再び独立エージェントを迂回して、顧客に直接アクセスしようとしていることに失望した"とIIAA(アメリカ独立エージェント協会)会長のビル・グリーンウッド氏は語る。 "ハートフォードは優秀な独立エージェントと委託契約を結んでいる。 彼等はこのプログラムに莫大な価値を付加できるはずなのだ"

グリーンウッドIIAA会長は、続ける:

"同保険会社によるフォード・モーターへのダイレクト・マーケティング(注)は我々独立エージェントに対する挑戦であり、警笛である; このような保険会社と顧客との直接取引に対しては、独立エージェントとして相応の積極的な対応をしなければならない"

実は、フォード・クレジット社の印刷物には'将来においては、独立エージェントがハートフォードの保険商品を、フォード・クレジット社の顧客に販売することができるように計画している'と述べられている。 しかし、フォード・クレジット社のスポークスマンは、'現在のところはダイレクト・メールによる勧誘のみを行なう'と語る。

プランでは、年末から、10州におけるフォード・リンカーン及び、マーキュリーの所有者に、自動車保険、ホームオーナーズ保険、個人上乗せ賠償責任保険、及びヨット・モータボート保険の販売開始を行なう。 しかし、"既存のハートフォードの契約者は対象外とする"、とフォードのスポークスウーマン、ミッチナー氏は述べている。


IBA Westのミラー元会長は、今回の提携は、エージェンシーライターによる始めての、又、唯一のダイレクト・マーケティングではないことを指摘しながら、

"我々は今後も多くのエージェンシーライターが、同様の直接販売を開始するだろう。 しかし、成功の度合いは知れている。 ハートフォードは我々独立エージェントを応援するような態度を見せながら、一方で陰険な手段で我々を傷つけようとしている"

とミラー元会長は結んだ。

(注)ダイレクト・マーケティング、 又は、ダイレクト・セリング = 保険会社が、ダイレクト・メール、新聞、TV等の広告を使用したり、又、特定の場所、例えば、空港、銀行、デパート等のカウンターで保険を販売すること。 販売担当者は通常固定給で保険会社に雇用されている。 専属エージェンシーを通じて販売する保険会社が、時に間違って、ダイレクトライターと呼ばれることがあるようだ(Robert I. Mehr and Emerson Cammack,「Principles of Insurance」1976より)

(IBA Westの「Weekly Insider」9月24日号及び10月8日号参考)

以上



HMO訴訟法案可決

去る9月、カリフォルニア州議会で、HMOに対する訴訟を認める法案SB21が可決された。 同法案は患者がHMOを訴訟することを許可ものである。 デイビス州知事は、法案の可決に伴い医療費が上昇することを避ける為、法案作成者に内容の変更を要求した、とABL (エージェント/ブローカー立法評議会)ロビイスト、グレルマン氏は伝えている。

改定された法案SB21では、死亡、四肢の機能喪失、慢性的な激痛等、重症に至らしめた場合の重過失に対する訴訟のみを認める内容となっている。

"従って、治療の多少の遅れや変更を理由として訴訟を提起することはできない。 それでも直、今後HMOが賠償責任を負う可能性があることは明白であり、それに伴う保険料の上昇が予想されるだろう"とグレルマン氏は指摘している。

記者会見における当法案推進者であるフィゲオラ上院議員の"HMOが正当な医療サービスを行なっている限り、法案可決によって医療サービスのコストが上昇することは有り得ない"という発言に対し、

カリフォルニア医療プラン協会のスポークスマン、コリー・ブラック氏は、

"州議会はこの法案が医療プランに与える影響の重大さや、医療サービス・コストの分析について充分な調査を行なっていない"と反論している。

"HMO等、医療サービス機関は、今後、賠償責任を避けるために殆ど全ての治療を引受けるようになる; そして、最終的にはfee-for-service(医療サービス毎に費用を請求すること)システムに移行し、過度のインフレーションを起すだろう"とグレルマン氏は語っている。

(「Life & Health Report」 10月14日号より)

以上


 

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