● 個人保険市場の区分化
数年前まで殆どの個人保険引受会社は"同質"であった。
しかし、最近、この個人保険市場が二つの大きなグループに区分されようとしている。
一つはフルサービスを提供する所謂"ビッグ・スリー"と呼ばれるステート・ファーム社、ファーマーズ社、オールステート社、
二つ目はリスクの低い良好な契約者を低保険料で引受ける20世紀保険会社や標準外自動車保険を引受けるプログレッシブ社といった特殊なニッチ商品を引受ける保険会社である。
ホームオーナーズ保険に於いては、カリフォルニア州地震保険局(California
Earthquake Authority)よりも選択幅の広い保険カバーを提供する保険会社も現れた。
個人保険市場が二分されることにより保険会社は以前より顧客を絞るようになり、流通チャネルを選択するようになる。
例えば、"ビッグ・スリー"は個人保険に於いて多種目の保険を必要とする裕福な顧客層をターゲットにするようになった。
多種目の保険とは、ホームオーナーズ、自動車、娯楽用自動車、ヨット、上乗せ賠償責任(アンブレラ)等をいう。
一個所で全ての買物を済ませる(One-stop shopping)
多種目の保険を必要とする顧客は、そのニーズを一人のエージェントに依頼することによって満たそうとする。
"One-stop shopping(一個所で全ての買物をする)"方式と呼ばれる。
この点に於いては、ビッグ・スリーは莫大な数の専属エージェントを抱えている。
この専属エージェント方式はインターネットを利用して保険を購入する顧客層にも有効である。
何故なら、多種目保険のニーズに関しては彼等も又、エージェントのアドバイスを必要とするからだ。
"このような顧客層やニーズに応えるようエージェントを指導している"と、ファーマーズ保険グループの西部16州個人保険マーケティング・マネジャー、ジョン・ガードナー氏は語っている。
ステートファーム社のスポークスマン、マーク・キャロル氏は、
"多種目の保険カバーを必要とする顧客が、当社に多大の利益をもたらすことを十分認識している。
従って、この点を重視したマーケティング戦略をとっている。
市場全体の区分化に対しては、積極的に対応していくつもりである"と語る。
ビッグ・スリーの中には個人保険全種目を購入した顧客には、保険料割引を提供している会社もあり、又、それを検討中の会社がある、
と、西部保険ブローカー&エージェント協会の個人保険委員会長であり、又、トライ・カウンティー保険サービス社社長のエリック・ボサック氏は指摘する。
保険料割引によって、ビッグ・スリーには彼等の望む顧客が自然に集まってくる。
高限度額の、多種目の保険カバーを購入する顧客はクレーム数も少なく、単一の保険を求める客より維持率も高いのである。
"しかし、他種目の保険を購入する顧客にとって利得な保険料割引は、低所得者の為のものではない"と、提案103条実行プロジェクトのフィリップ・ロベルト氏は指摘する。
又、現在ビッグ・スリーが積極的に取組んでいるのは保険以外の金融サービスの提供である。
例えば、5週間前ファーマーズ保険会社は29州の15,000人の専属エージェントを通じて教育ローンの提供を開始し、
数州では引越しサービスの試験マーケティングにも着手した。
更に、現在、自動車ローンや自動車の機械的故障に対する延長保証保険を検討中である。
今年の初め、ステートファーム保険会社は他種目保険付保の顧客に対し、より幅広い金融商品を提供すべく連邦銀行営業認可を申請した。
銀行が保険商品販売に於いて大幅な規制緩和を受けたことに対し、保険会社は銀行業務を通じて利益を追求するためである。
1980年代にシアーズ金融ネットワーク
の傘下にあったオールステート社は、保険以外の金融商品の取扱いに関しては、ステートファームやファーマーズ保険会社とは異なったスタンスをとっている。
シアーズ金融ネットワークには、ディーン・ウィッター証券会社、コールドウェルバンカー不動産、シアーズ貯蓄銀行、とあらゆる金融関連会社が同様に傘下にあった。
しかし、シアーズ金融ネットワークが終結して以来、オールステート社は保険のみに焦点をあてている、
と同社のスポークスウーマンであるナンシー・アンダーソン氏は語る。
ただオールステート社も個人保険市場の区分化に際して好機を見逃すような"業界の素人"ではない、と付け加えた。
(「Smart's Insurance Bulletin」 9/18/98 - used with permission)
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